　　　　　新しい日本の幸福　脱ヨーロッパ　　　　武田邦彦　　　　　2022/2/16

　　アメリカも真似たい「Japan as No.1」と称された日本の教育

白人社会（ヨーロッパやアメリカ）は実に不潔な社会だ。
それは、今のヨーロッパ人の考え方も不潔だが、歴史的にも不潔な環境で住んできた。
そして今、清潔な日本人が不潔なヨーロッパやアメリカを学ぼうとしている。

著者が中央教育審議会の専門委員だったころ、大学の博士課程の進学率を高める政策を実施するという提案があった。
大学という教育方式はヨーロッパから日本に持ち込まれたのだから、学部４年、大学院修士課程２年、大学院博士課程３年という
基礎的な仕組みは海外のものである。
そして欧米は歴史が古いので、徐々に大学教育が充実し、修士課程、博士課程に進学する人が多くなっている。
それに対して、日本では４年では少し教育時間が足りない工学系、医学系などは昔から修士課程に進学して、６年の教育を受ける学生が多かったが、
文科系を中心として依然として日本の大学生は４年で卒業する。
このことが大学教育者としては長年のコンプレックスになっていて、
特に専門職としての博士課程（ドクターコース）の学生を増やしたいという希望を持っていた。

ただ、社会が必要とする人材という点では日本と欧米では大きく違う。
日本は「絡合力により集団で力を発揮する」という方法であり、工学系はもとより医学系ですら「チーム医療」というのが中心である。
これに対して欧米では博士課程卒業者（ドクター）が技術上の計画を立てて指令を出し、修士課程以下の人はその指令に基づいて業務を行うという分業である。
最近、医学系では個人のドクターが支持するのではなく、チーム医療が注目され、あたかも欧米から日本に輸入されたと錯覚している人もいるが、
本来は日本のやり方である。

　　そして結果はどうだろうか？
工学系（電気電子、機械自動車、化学建築など）では圧倒的に日本の教育が成功し、Japan as No.1 と言われるまでになった。
また医療では高額で収入によって異なる治療を受ける欧米に対し、献身的な医師によって国民はすべて最良の医療を受けることができる
日本の方がはるかに優れていて、今、高額医療の問題もあり、アメリカもオバマケアーなど日本を真似ようとしている。

　　欧米文化への先入観に囚われず、日本の安全を守るために大切なこと

ところが、ある時に中央教育審議会に「アメリカに対して劣っている日本の博士課程を強化しよう」という提案が出された。
アメリカは先進国である、アメリカは素晴らしい・・・という先入観で固まった委員はだれも反対もしない。
「日本もようやくアメリカのようになることができるか」という感じであった。
そこで著者が「日本の大学教育の方が成功しているのに、なぜ優等生が劣等性を学ばなければならないのか」と質問したが、だれも返事はなかった。
事実、電気製品でも自動車でも社会の平等性でも、いずれも日本の方が優れているのに、
なんでアメリカを学ばなければならないのか？という疑問をだれも持たなかったというのは驚きであるし、
いかにもコンプレックスに押しつぶされている日本でもある。

日本が清潔なのは、「インドから東南アジア、そして日本に至るインド太平洋文化圏がもともと清潔だった」という見方もある。
古代インドのモエンジョ・ダーロの下水道は有名であるが、日本でも古代から民家の周りに下水を回している。
廃棄物は住環境から遠ざけるという考え方は昔からあるが、古代エジプトのナイル川が動物の死体が常に浮いていたと言われるように、
それを引き継いだヨーロッパでは、都市部でも１８世紀ぐらいまで廃棄物を道端に捨てていた。
それにも関わらず、新型コロナが流行すると「ヨーロッパが＊＊をしているのに、なぜ日本は追従しないのか」という日本人が現れ、
ヨーロッパとは流行の状態が大きく違うのに、不潔なヨーロッパを真似ようとする若者も現れた。
日本はあまり対策を取らず、効果のないワクチンなどを使わなければ、持ち前の清潔さで流行は抑えられ、
徐々に国民に免疫ができて日本にふさわしい防御策が取れただろう。

普段の冬のカゼ、インフルエンザなどの知識のない国民に向かって、常にコロナの状態だけを報道し、恐怖心を植え付け、
事態を混乱させたメディアの罪は深い。
「過ぎたるものは、なお及ばざるがごとし」で現実に反する過剰な防御は副作用が起きて、沈静化を遅らすのは言うまでもない。
ただ、幸いにして日本は常に安全な社会を保っているので、これまでの「汚いヨーロッパ」を参考にすることなく、
今後も予想される大規模流行病に対して、冷静で科学的な防御策を作っておくことが大切である。
日本の文化は、靴を脱いで家に入る、水を多く使って身体を清潔にしておく、大量に供給される食料はＡＤＲ思想
（科学的に判明した安全基準の１００分の１にして食材を販売するという考え方）などによって、
すでに疫病の流行を阻止する基本的な環境が整えられている。
その点では「環境最優良国」なので、これを劣等国（ヨーロッパ）に真似て低下させないようにしなければならない。
有効ではないワクチンをウソをついて「国民の７０％が２回接種すればコロナの流行は沈静する」などと言わず、
科学的根拠のあること以外は専門家は言わないようにしなければならない。

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