　　　　『アフターコロナの日本社会とビジネス（５）　不合理な判断とリンチからの回復』　　　　2020/8/19

　　「注意をしたから」「基礎疾患」。　国民を困惑させた間違った表現

コロナ騒動はやがて終わる。
なにしろ、昨年12月に中国から流行が始まって9か月にもなるのに、少なくとも日本では例年のカゼ（インフルエンザ、コロナ、アデノ、ライノ、ＲＳなどの各種カゼ）
の感染者数 4000万人（推定）、患者数 2000万人（実測）に対して、感染者数で 5万人と 0.00125倍（800分の1）と極めて少なかった。
それに加えて新しいウィルスの出現に他のウィルスの感染が抑制されて、インフルエンザが例年の 6割程度であったとされる。

つまり、例年にはカゼを引く人が 4000万人だが、今年はコロナのおかげで感染者は 6割の 2400万人、
それに新型コロナの 5万人を加えて 2405万人だったというわけだ。重症者、死者も心配するようなことはなかった。
例年は単なるカゼの死者はカウントされないが、インフルエンザは約 1万人、それも今年は 6000人程度で、おそらく超過死亡という考え方では、
インフルエンザの死亡者 1万人が、今年は 6000人。それにコロナの 1000人を加えて 7000人というところだろう。

いずれにしても、幸運か必然的なものかはわからないが、「新型コロナが流行したおかげで、冬のカゼの犠牲者が減少した」というわけだ。
データを見ないで先入観で意見を述べている人の中には、「みんなが新型コロナを防ごうとマスクをしたりしたので、カゼの流行も減った」などと言っているが、
実はまだ日本での感染が増えていなかった 1月にすでにインフルエンザなどの流行が激減していたので、「注意をしたからカゼが減った」のではなく、
「新型コロナが他のカゼを抑制した」のは確かである。

また、「高齢者や基礎疾患のある人が重篤化する」と言われたが、これも正しく言えば間違いだった。
人間は「死ぬか生きるか」を選択できるものではなく、「いつ死ぬか」だけが選択できる。
その点では「自然死をする年齢」がコロナによってどう変わったかが問題だが、2020年8月までの統計を整理すると、
新型コロナで命を失った人の平均寿命は、自然死の平均寿命より上である。

つまり、これも先入観とは違って「コロナが流行して平均寿命が延びた」という結果になった。
また「基礎疾患のある人」という表現は医療現場に配慮したもので、本当は「治療によって免疫が低下している人」という意味だった。
難しい病気の多くは免疫力を変化させないと生きていけない場合があり、リンパ節を切除するような免疫力を著しく低下させた方が死亡した。
しかし、その人が有名人の場合、プライバシーに配慮してそれを言わずに間違った表現「基礎疾患」とした。

現代はあまりに複雑になったことで、事実をそのまま伝えるのが難しい。それが事態を紛糾させる原因にもなっている。
ともかく、すでに女性では 50歳以下と 50歳以上の人口はほとんど同じであり、「少子高齢化」の時代ではなく、
「人生１００年を２つに分けて考える時代」になっている。
その意味で、インフルエンザでは 20歳以下の若年層の罹患率が極めて高く、死亡者は高齢者という特徴とは違い、
新型コロナでは 20歳以下の感染者率はとても低く、20歳以上の成人が感染したという意味でも今後の社会に違った影響をもたらすだろう。

　　止まらない県知事たちの感染者批判。日本は正しい道へ戻れるのか

また、新型コロナの騒ぎでは地方自治体、特に知事の政治力、見識、人格などが極めて低いことが露呈した。
もっとも不適切だったのが、「新型コロナに感染する人は悪い人だ」という見解を表明する知事が多かったことだろう。
有名なかつての「らい病」、現在の「ハンセン病」が罹患者を社会的に差別し、虐待したことを批判され、
小泉首相が過去の罹患者の取り扱いについて正式に陳謝した。
でも今回、日本社会が新型コロナ感染者に対して取った態度、特に地方自治体、メディア、そして知事の態度は、これが「現代か？」と疑わしくなる状態だった。
メディアは「何県の誰々、何会社の何歳の女性従業員が感染した」と個別具体的に報道し、サッカーの監督、相撲取り、高校野球選手、芸人などでは
「誰彼がカゼ（新型コロナ）に感染した」とまるで社会悪のように伝える。
それを受けて、知事が「わが県で何人目の感染者が出た」と記者会見をする始末である。
そのうち、だんだんエスカレートして岡山県知事は「他県の人は岡山に入ってくるな」と言うし、
兵庫県知事に至っては「飲食店でコロナに感染した人が出たら、食中毒と同様に営業を停止する法律が必要だ」と言うまでになる。

第一にカゼを引くかどうか（コロナに感染するかどうか）は通常の人間の生活の範囲内であり、
第二に飲食店にしてみれば自らの責任とは関係ないことで責任を取らされるという、前近代的な被害を被ることになる。
また都知事は新宿、池袋の繁華街に狙いをつけてＰＣＲ検査を行った。
まるで「狙い撃ち」行政を行ったという点でこれも日本の公序良俗に著しく反する行為だった。
自粛警察、マスク強制、会社で１人でも感染者が出れば、会社全体を休業しなければならないという社会的圧力など、現代日本とは思えない傷跡を残した。
これが正常な方向を向いて回復するために、どの程度の時間を要するかが今後の問題である。

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