『ウイグル人という罪』　　　清水ともみ ・画、　福島香織 ・文　　　　書評　宮崎正弘　　　（扶桑社） ウイグル自治区へ果敢に突入し、現状をルポした 福島香織さんのジャーナリスト魂と、中国の全体主義を勇敢に告発し続ける 清水ともみ画伯のコラボ。 だれでもわかるウイグル問題が一冊になった。 2020年6月17日、トランプ大統領（当時）は 「ウイグル人権法」に署名し、同法案は成立した。 ウイグル族弾圧に加担した中国当局高官らへの制裁が課せられた。 英国、豪、ＮＺ、カナダなど ファイブアイズの国々も同様な非難声明を発動した。 2021年1月19日、バイデンの就任式を 2日後に控えていたが、ポンペオ国務長官は 「中国政府のウイグル弾圧は 『ジェノサイド』 だ」 と認めた。 　ポンペオは次の発言をなした。 「ジェノサイドが進行している。 中国共産党によるウイグル民族破壊の試みを目の当たりにしている。 自国民に対してジェノサイドを人道に対する罪を容認すれば、そう遠くない未来に、自信をつけた中国共産党が自由社会に何をするか、想像したまえ」。 　身も震えるほど怖ろしい未来が透けて見えないか。 カナダ、オランダ、英国、チェコ、ベルギー、リトアニア国会はつぎつぎと中国をジェノサイドと断定し、スロバキア、イタリアなどが検討している。 百年前のパリ講和会議で、日本は世界に先駈けて 『人種差別の撤廃』 規約を提案した。 戦争中、日本は国を挙げて民族差別と闘い、リトアニアの日本領事館にいた杉原千畝は 6000名のユダヤ人にヴィザを発給し続けた。 白人列強が支配したアジアの植民地解放が大東亜戦争の目的だった。 その日本がなぜ中国がウイグル族を弾圧している実態を 「ジェノサイド」 と認定が出来ないのか。 なぜ日本が主導する制裁が出来ず、アメリカの制裁に従って綿花製品に格段の注意を払っているだけなのか。 福島さんは 「マグニッキー法 （深刻な人権侵害に関与した故人や組織に資産凍結と云った制裁を科すため、2012年に米国が制定した法律） に相当する 人権侵害制裁法がまだない」 と指摘する。 わが国の国会では、少数のまともな感覚を持った議員が、決議だけでもと動いたが、土壇場で親中派が、この動きを封じるという醜態がでた。 「北京の代理人」 が国会にうようよと蠢動を続けているのは国際的にみても、「日本の恥」 である。 　中国の人間性の欠片もない、非情な弾圧を日本政府は黙殺してきた。 百万以上のウイグル人を 『監獄』 に閉じこめて 洗脳教育、従わないと拷問、強制労働、臓器狩り、不妊手術による民族浄化。 これを中国は 「労働と就職のための訓練センターだ」とのたまわった。 おぞましい限り、というより人類史上、このような残酷なことが行われていることを信じない日本人が多い。 メディアがおおきく報じないからだ。 報じようとすると 「目に見えない圧力」 がかかるからだ。 本書を通読しての第一の感想は、日本政治の歴史始まっていらいの失態ぶりである。 　　　「本棚」 へ戻る