『価値観の侵略から 日本の子どもを守る』　　　　近藤倫子　　　 　　書評　宮崎正弘　　　（ハート出版） 直接侵略は軍事的脅威が主だから、目に見える。ウクライナ戦争の惨劇をテレビ映像でみている多くの日本人も、軍事侵略は理解しやすい。 しかし間接的な、目に見えない侵略は、気がつくまでに時間がかかる。 ハタと気がついたときは手遅れになっている場合が多い。 日本には異形な、文化破壊を目的とする、「異教、異文化の価値観が大規模な侵略」を展開している。 LGBT も、夫婦別称も、「多文化共生」なる戯言も、本来の日本の価値観をぶちこわし、日本民族を分裂させる 「あっち」系の策謀である。 常識で考えれば日本は何をしなければならないかは自明の理だが、GHQ の洗脳がかえって現代に拡がり、 とうに占領は終わって日本は独立したはずなのに多くの日本人が肝腎の日本的価値観を忘れてしまった。 訳の分からない言動や音楽、日本語になっていない小説、バイオレンスかエロ過剰の漫画。 おくゆかしい日本文化にそぐわないものが横溢し、社会はハチャメチャに歪められた。 本書は、そうして 異教的価値観の侵略と洗脳に対して、如何にして子ども達を守り、立派な日本人に育てるかを、 実際に三人の子育ての経験から論じた、女性にしか書けない切実な願いを籠めた書物である。 そうだ。 子どもを育てることは 神事 なのであり、無意識の中に内在化させる家庭教育が必要とされるのだ。 　第一に、家庭教育、とくに母親の 情操教育の重要性 を説く。 「内なる国防は家庭にあり」 なのである。 「専業主婦」とは立派な職業だ、と 井尻千男がさかんに唱えていたことをおもいだした。 　第二に、日本は男尊女卑ではなく 「男尊女尊」の国であって、女性は神代の昔から自律して居た。 天照大神は女性ではないか。 男女同権とかフェミニズムとかは、逆に西洋ではいかに女性が虐待されてきたかの裏返しである。 イスラム圏でも イラン、アフガニスタン、サウジアラビアでは女性が依然として差別されている現実を目撃すれば、日本とはまるで違う歴史的沿革を了解出来る。 或る時（といっても三十年は前のこと）、パキスタンの外交官の自宅にパーティで呼ばれて驚いたことがあった。 外交官夫人たちは別室に籠もって男性の前には出てこないのである。 いま、トルコを筆頭に世俗イスラム圏では女性の進出が顕著だが。。。。。 　第三に、戦後教育の悪弊により、「良妻賢母」が絶滅の危機に瀕している。 ダブルインカム・ノーキッズが 「パワーカップル」とか言われ、共稼ぎ、自分たちだけの享楽、こどものいない寂しさをペットを飼ったり、一人カラオケや一人旅、 ようするに人付き合いが鬱陶しいのである。 こうしてもっとも大切な 伝統的日本の価値観 を壊したのは フェミニズムなどの異物、価値観の侵略である。 　第四に、家事とは家政であって神事である。 掃き清め、空気を、環境を洗い清める。 調理も衣服も神事にもとづき、家政学とは 『無味乾燥なつまらない学問ではなく、日本人としての息吹きを感じる興味深い学問』ということになる。 　第五に、母親は家庭に還るべきである。 食事作法、立ち居振る舞い、挨拶の礼儀などは文化である。 母親がそれを躾けないから、日本の若者たちの暴走、闇バイト、ホスト狂い、乱倫。　 優先席にすわる若者たちの図太い神経も驚きだが、老人が目の前に立っても席を譲らない。 二重の驚きである。 評者はあの道徳に欠ける中国ですら満員バスや電車で若い女性に譲られた。 政治家は少子化対策として支援金の充実や保育園援助などと金銭の発想しかない。 少子化は経済的理由だけが問題ではない。 子どもを産むことが 「名誉」 と考える風潮づくりが必要だと著者は主張するのである。 　　　「書棚」 へ戻る