『 日本を滅ぼす簡単な五つの方法 』　　　　　織田邦男　＆　西村幸祐　　　書評　宮崎正弘　　（ワニ・プラス） 現代日本人はなぜこうまでふにゃふにゃなのか。 大和魂はどこへ行ったのか。 最大の原因は GHQの置き土産、日本人の洗脳工作の残置だ。 いまも甚大な悪影響力を残しているだけではない、以前より悪化していることに加えて、日本人が劣化している。 総裁選に名乗りをあげた候補者の殆どが、その類いである。 九人の候補者のなかで、じつに四人がハーバード大学、残り二人がジョージタウン大学とコロンビア大学留学。 アメリカに染まった頭脳構造の持ち主である。 占領が終わり主権回復後も日本に主権があるとは思えない。 伝統的な精神が廃れ、思想の貧困と混迷は米国が残置した目には見えない洗脳装置の作用の結果である。 　それは五つの方法からなる。 　１）　 情報を閉ざす 　２）　 歴史を削除する 　３）　 言葉を奪う 　４）　 幻想をあたえる 　５） 　闘う名誉を奪う 　GHQ が植え込んでいった洗脳装置は依然として効果的だ。 そして中国が便乗しているからたちが悪く、日本人の劣化は続行される。 　織田氏 「日本は豊かになったが、内なる 『虚ろなもの』によって溶解しつつある」。 　西村氏 「GHQは自らが占領を解いて日本を独立させた後でも、占領体制が継続する仕掛けを設置していた」。 　その仕掛けが前掲の 「五つの方法」だ。 　第一に、日本に言論の自由があるかと言えば、たしかに少数のミニコミ誌、一部のユーチューバーに散見されるのみで、 大手メディアは新聞、テレビに限らずネットの言論空間でも正論は少なく、しかも往々にして削除される。 こう書いている評者（宮崎）自身、番組が突如ユーチューブから削除されたり、主宰するメルマガは一晩で千名近い読者がリストから削除されたりしている。 メディアはいまも汚染されたまま、例外的に正論を吐くと「極右」と呼ばれるのは西側に共通だろう。 　第二に、歴史を削除するという方法は日本史を暗くて残酷で支配者が国民を搾取したなどと規定し、 日本史を学ぶと日本人であることが恥ずかしいとおもうように洗脳される仕掛け、それが戦後の歴史教科書だった。 正しい歴史教科書をつくっても教育委員会が採用しない。 これは戦後レジームという ”敗戦利得組の利権構造” だからである。 左翼の既得権益を彼らは死守するために 鉄壁の壁 を構築している。 文科省も馬鹿に近い役人の巣となった。 正しい史観にもとづく歴史をとけば 「修正主義者」のレッテルを貼られ、アカデミズムから追放されるから勇気ある学者は登場しにくい。 防衛大学校長をみても分かる。 猪木正道とか、五百籏頭真とか、国分良成とか、一体何だろう？ 愛国精神が疑わしい人が防衛大校長になる。 だから卒業生の多くが任官拒否に走るのだ。 　第三に、言葉を失うとは民族のアイデンティティを喪失することである。 チベットで ウィグルで、モンゴルで起きた。 満州語は消えかけ、チベットの若者は本当にチベット語を喋れなくなった。 これほどの悲劇はないだろう。 民族の言葉の喪失は文化の喪失につながる。 台湾独立運動が台湾語をまもっているのは彼らのアイデンティティの確保である。 それでも都会の若い台湾人は台湾語を喋れなくなりつつある。 これは長期的な北京の戦略に合致する。 国民党と共産党は一卵性双生児である。 現実に四川省の山奥のチベット村を訪問したおり、足裏マッサージに入ると二人の若いチベット人女性とは北京語会話だった。 「あんたたちチベット語を喋らないの？」 「ええ、学校で教わらなかった。 親は喋りますが。」 ウィグル自治区でもたとえば自動車免許の受験は北京語で受ける。 わかい ウィグル人は北京語を覚えるのに懸命だった。 サウスチャイナ・モーニングポスト（9月23日）に拠れば、少数民族地区での北京語強制教育を 「排外主義」ととらえながらも、 　第四に、幻想とは平和主義というファンタジーのお花畑。 乙女の祈りが平和をまねく？ さすがに非武装中立という寝言を言う人はいなくなったが防衛議論となると耳に栓をする手合いが多い。 　第五に、戦後日本は軍人から名誉を奪った。 国民が軍人を尊敬しない国は亡びるしかない。 「日本の再生はこれらの呪縛から覚醒することで始める」と。 　　　「書棚」 へ戻る